『2300AD』の難点といえば、リアルだけど見辛い星図がまず挙げられると思います。『トラベラー』のツッコミどころだった「宇宙が平面図で表現されている」点に対する回答とも言えるのですが、そもそも三次元の図を二次元に落とし込む時点で無理があるわけで、そういう意味では『トラベラー』のヘクス星図は「決してリアルではないけど利便性は高かったなぁ」と思うわけです。
じゃあ『2300AD』の航路図を『トラベラー』のヘクス星図に落とし込めばどうだろう…ととなるわけですが、私が考える以前にGDWの情報誌『Challenge』第75号(1994年発売)にて「Core Subsector」という、わずか2ページ(しかも大部分は扉絵)ながらもそういった記事が掲載されたことがあります。『Traveller: The New Era』で『2300AD』設定を楽しむための企画に見えましたが、その後は続かなかったので今となっては意図は不明です。
それから20年が経ってちょうど『2300AD』に触れる機会がたまたまやってきて、そして手元にツールがある。なら、やるか(笑)。ということで、『2300AD』の太陽系周辺を『トラベラー』の宙域図方式に落とし込んでみました。試行錯誤の結果、結局『トラベラー』と同じ「1ヘクス=1パーセク」で表し、
- 隣の星系までの距離は大体正しくする。
- 隣の星系への方角はなるべく正しくしたいが、距離同士の兼ね合いで難しいなら大胆に動かすのもあり。
- 再現するのは『2300AD』基本ルールブックの範囲(後に開拓される航路は無視)。
- UWPはマングース版を利用し、なるべく多くの資料で裏を取る。データがない未入植星系は宇宙港X・水界なし扱いとする(水があれば入植しているだろうから)。
- 「星系名」は惑星名の設定があればまず優先、次に前哨基地名、前哨基地が複数ある又は惑星設定がないなら恒星名とする。
- ガス惑星の再現は資料が揃わないし、燃料掬い取りができない『2300AD』では意味がないので諦める。
- Travellermap APIの都合上、一度に再現できるのは1宙域範囲まで。はみ出たら別宙域扱いとなる。
というルールで再現しました。よって、航路で結ばれていない星系間の距離や方角は全く正しくありません。これは実は『2300AD』の設定では致命的で、牽引船(タグシップ)を利用して「7.7光年の壁」を突破されてしまうと、『2300AD』の設定では本来行けないような場所でも今回の星図では行けるように見えてしまうのです。まあ実際に利用される方はいないでしょうし、今回の星図はあくまで雰囲気だけを楽しんでください。
(凡例)
【航路】濃い線:主要航路 薄い線:その他の航路
【宇宙港】A:軌道エレベータ B:加速射出路 C:宇宙往還機(シャトル) D:再使用型単段式ロケット(ロトン) E:多段式ロケット X:なし
【種別】★:植民地 ▲:前哨基地 ■:知的種族母星
【領土】Fr:フランス UK:イギリス US:アメリカ Ma:満洲 Ge:ドイツ Ca:カナダ Br:ブラジル Au:オーストラリア Ba:複数国領有 Co:企業・団体所有
……あまり改善されたようには見えませんね(大汗)。そこで主要でない航路を外してみたのがこれです(ペンタポッド領域はカット)。
航路がXボートっぽく見えるので、『トラベラー』に慣れた身にはこれぐらいでいいかも。宇宙港X・水界なし・ガス惑星なしの三重苦の「行き止まり」星系は『トラベラー』に慣れた人ほど本能的に避けるでしょうから、実質的に航路上しか動こうとしないでしょうし。
あと、もっと『トラベラー』っぽくしたおまけを。
星域名は単なる雰囲気付けです(一応公式設定の裏付けはありますが)。ちなみに『Challenge』誌では「シリウス宙域」となっていましたけど、確かに一番明るい恒星名を付けるというのは考えられなくもないにしても、太陽系がある宙域で太陽(ソル)を差し置いてシリウスにするかなぁ、という疑問も。『2300AD』の宇宙ではシリウスはほぼ無価値の星ですし…。
とりあえず作ってみたものの、『2300AD』のルールでは隣の星までの正確な距離がワープ時間の算出に必須である以上、実用性は皆無ですね(大汗)。ワープのルールをいじって「民間船は1ヘクスで2日、軍艦は1ヘクス1日」とか丼勘定にするぐらいでないと、テーブルの飾り以上の使い道はないかもしれません(苦笑)。