宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

リーヴァーズ・ディープ宙域 ライブラリ・データ(2025年改訂)

 以下の文章は「極力公式資料に基づく最新の1105年設定」を解説したものです。「非公式設定をも取り込んだ古い1115年設定」はこちらです。


【ライブラリ・データ】
アイヒー Aikhiy 1634 C546616-7
 この星系には-80年代にロァホール氏族が最初に入植しましたが、この時の入植地はうまくいかず、今ではその名残りが地名と遺構にあるのみです。
 フトホァーの和約後、ここにはヴェニス(1534)・グラリン(1735)両政府の合弁企業であるアイヒー開発公社(Aikhiy Development Trust)が集めた人類が定住しました。同社の目的は、両星系に安価で良質な農産物を供給することです。
(※これはT5SSでアスランが居住していることになる前に作られた設定です。帳尻を合わせるなら、今いるアスランは公社が集めたか、イホテイがこっそり入植して既成事実化したのでしょう)

アウトポスト Outpost 1926 B310442-D N
 この「前哨基地」は帝国国境の外にありますが、帝国海軍の立派な軍事拠点です。872年に設立されたアウトポストは、星系の最も内側の軌道にあるガス惑星の第3衛星にあります。軍人のほかに、少数の民間人(ほとんどが非帝国市民)が軍人を支える職のためにこの惑星に定住しています。
 この星自体には産業も資源もほとんどありませんが、商業船舶の主要な中継港となっています。アウトポストの大きな宇宙港には優れた設備があり、貿易や行動に対する制限はほとんどなく、さまざまな情報、商品、機器を入手できる結節点です。
 アウトポストが建設された理由はいくつかあります。まず、かつて海賊や紛争の脅威にさらされていたこの星域に安全をもたらすため、そして、帝国と友好国ダンシニー連合との間の連絡を維持するためです。
 この前哨基地は、フトホァーの和約に抵触しないよう慎重に建設されました。まず、870年に約500名の入植者によってこの星は開拓されましたが、そのほとんどが帝国海軍の退役軍人でした。彼らは翌年には帝国属領となる請願手続きを行い、その翌年には海軍基地が設置されたのです。その際、和約の条項にある、属領から土地を借り上げられる「抜け穴」が利用されました。これには一部の有力なアスラン氏族から抗議はありましたが、それ以上のことは起こりませんでした。それでも、基地の閉鎖を求める圧力が内外から(多少は)かかっているのは事実です。
(※緩衝地帯の星系を属領化すること自体は和約違反ではありませんが、軍事拠点化することは違反になります。よって建前上、帝国は「地元の」海軍基地を「借りて」いるのです。ちなみに各属領には帝国大使館が置かれ、属領星系にもキャピタルへの大使館設置を推奨しています)

アスラン語 Aslanic
 アスランの言語「トロール」そのものではなく、人類が発声しやすいように変化したトロールを指す、言わばトロールの方言です。文法にトロールとの違いはありませんが、性別固有の規則がないことが特色です。また、アングリックからの借用語が多く含まれます。アスランにとってアスラン語は「身分の低い」言葉に聞こえますが、その代わり、アスラン語話者の失言や無礼に対してはかなり寛容に接します。
 アスラン語は暗黒時代に生まれ、アスランと接することの多い人類にすぐに広まりました。現在ではダーク・ネビュラ、リーヴァーズ・ディープ、マジャールの3宙域で広く知られています。

アスラン国境戦争 Aslan Border Wars

「アスランが常に介在したわけではなく、実際に国境があったわけでもなく、ましてや、戦争と呼べるものすらほとんどなかった」
――あるソロマニ人歴史家


 -1120年から380年まで人類とアスランの間で続いた戦争、と一般的に誤解されているものです。従来は以下のように捉えられていました。

 主要種族の中で一番遅く宇宙に出たアスランは、すぐに人類の勢力圏と接触し、領土争いをする関係になりました。当時の人類には統一政体はなく、「小帝国」や星系単独政府がそれぞれアスラン氏族の攻勢に耐えなくてはなりませんでした。最盛期のアスランは旧帝国の領域を約40パーセクも侵食していました。
 しかし帝国暦200年にもなると第三帝国が伸長してきて、進んだ技術で秩序立った反撃が可能となりました。それでもアスランは氏族ごとにしか行動ができず、各個に撃破されていきました。
 最終的に、380年に帝国と4大氏族との間で「フトホァーの和約(Peace of Ftahalr)」が結ばれ、両者の間に約30パーセクの中立緩衝地帯を設けることで境界線が確定しました。

 しかしその実態は、約1500年間に渡って5~6宙域で繰り広げられた、そのほとんどが小規模の無数の紛争の集合体に過ぎません。多くの学者は、明確な歴史的出来事と言うよりは、慢性的な政情不安と考えた方が良いと指摘しています。
 国境戦争は人類とアスランの対立として語られがちですが、現実は遥かに複雑でした。確かに多くの戦いはアスラン氏族と人類小国の間で戦われましたが、混沌とした情勢の中でアスランの家来として人類と戦った人類国家もありましたし、交戦した両陣営がアスラン氏族を傭兵としたこともありました。紛争の始まりと終わりこそ大規模な戦闘が繰り広げられましたが、ほとんどの戦闘は一撃離脱の襲撃で終わりました。
 「国境」というのも語弊があります。明確に定義された国境はそもそもなく、数星域の幅を持つ混在した不定形の領域がそこにあっただけです。何世紀にも渡って紛争と和解が繰り返されていくうちに境界線は徐々に広がり、不明瞭になっていったのです。

アリエル教 Arielism
 イスライアト領で広く信仰されている宗教で、イスライアトがアスラン氏族の家来となった時代にマイジャーラ(0320)で創始されました。これは破壊神と聖なる創造主による二元論的宗教で、両者には獅子の頭を持つ翼人の姿をした精霊が仕えています。アリエル教ではアスランはこの精霊の子孫と考えられていて、人類の師であり誘惑者でもある存在として宇宙に遣わされたとされます。
 ただ、時代が経つにつれてアリエル教は原理主義的、技術忌避的傾向を強めていきました。イスライアト領の技術水準が中央値でTL7に留まっているのはこの影響です。

イザナク大提督 Grand Admiral Izanak
 ドレシルサー(1826)の群小種族イルサラ人の歴史の中で、最も重要な役割を担った《略奪王》(Reaver warlord)です。
 -1030年、強力な敵との戦いに敗れたイザナクは逃亡先のドレシルサー(1826)に着陸しました。彼はドレシルサーの3民族の中で当時最も遅れていた(といっても初期工業文明に達していた)イルサラ族を選んで、技術提供と引き換えに船の修理を手伝わせました。
 8年後、修復を済ませて星々の世界へ帰っていったイザナクのその後は、誰も知りません。
(※従来は確かに公式設定でしたが、なぜか最新設定では一切この事について触れられていません。もしや実在が疑われているのでは…?)

イスライ語 Islai
 イスライアト領内で主に使われ、-800年頃に現在の形となった人類言語です。アングリックの派生ではなく、既に消滅した古代テラの言語(しかもおそらく複数の)の流れをくみ、トロールからの多くの借用語が含まれています。

イルサラ帝国 Iltharan Empire
 群小種族イルサラ人は、-1030年に母星ドレシルサー(1826)に逃亡してきた《略奪王》イザナク大提督の船から核融合炉とジャンプドライブの技術を入手し、当時TL4~5程度だった技術水準を飛躍させました。その20年後には彼らは宇宙に飛び出し、そして彼ら自身の拡張主義志向も手伝って、ドレシルサー周辺の星系を次々と併合していきました。
 しかし、誕生したばかりのカレドン公王国と遭遇・交戦したことで拡大の勢いは止まり、続く300年間は宙域に進出してきたアスランと第三帝国の狭間で没落していきました。それでも彼らは好戦姿勢を捨てず、暗黒時代の終わりとともに増加していった星間物流への襲撃をやめなかったので、イルサラ帝国と第三帝国は直接対峙することとなりました。
 最終的に、250年には当時イルサラ帝国領だったダンシニー(1624)、ラナルド(1526)、フルトン(1524)の反乱を公王国政府が支援し(※この3星系は元々カレドンからの植民星でした)、帝国軍の支援を受けたカレドン軍がイルサラ軍を次々と破って星々を解放していきました。そして268年、帝国海軍によるドレシルサー爆撃によってイルサラ帝国は終焉を迎えました。

イルドリサール Ildrissar 2326 C995836-7 A
 ドレシルサー星域にあるこの星系は、約200年前に本格的な入植が始まってからずっとカーリル合州国に属しています(※ただしそれ以前にも断続的に採掘企業の進出はあったようです)。この惑星はその高重力と地表あちこちで蠢く活発な火山活動によって重金属や放射性物質が豊富であり、それが人々を惹きつけたのです。
 これまでイルドリサールは合州国の一員として国家の発展に貢献し、そして国家から数々の支援と恩恵も得てきました。しかし1105年以降、合州国のダルドリーム大法官が憲法に反して強大な権限を得た結果、増税、鉱石の価格統制や採掘制限、主要産業の国有化などの急激な政策転換によってイルドリサールは大打撃を受けました。
 イルドリサールの住民は自星の利益に完全に反するこれらの政策に異を唱え、憲政への回帰を求める保守派から合州国離脱を訴える過激派まで、様々な政治派閥が誕生しています。特に(影響力と資金力で優る)過激派は武器を蓄えて外世界から傭兵を呼び込むなど、不穏な動きを見せています。

ヴィルシャシュ Virshash 2724 DA86954-6 S
 緩衝地帯に接する高人口の帝国領であるヴィルシャシュは、国内で最も有名な群小種族に挙げられるヴィルシの故郷です。彼らはその巨大さと温厚さと、そして社会への反発心で知られていますが、本質的には無政府主義であってもその協調性の高さから帝国という「制約」の中でも立派にやっていけていますし、彼らの文化と精神性の影響は多くの近隣星系で感じられます。
 連星の主星シントルは強烈な放射線を発し、惑星の高重力(1.75G)と濃厚大気も相まって環境は著しく不安定ですが、ヴィルシを含めて巨大で屈強な生命体による豊かな生態系を生み出しました。これら大型動物は基本的に四対の手足を持っています。
 現地の技術レベルは6に過ぎませんが、帝国人たちはヴィルシとの貿易を促進するためにそれよりも高度な生活・産業基盤の開発を進めました。赤道地帯の大きな島に宇宙港を建設し、輸送網の構築や工場の自動化が行われました。加えて帝国偵察局は、国境外での長距離探査活動を支援するために、ここに基地を構えています。それでも地表の大部分は、かつて地球人探検隊が最初に見た風景とあまり変わっていません。
 宇宙港の内側は当然帝国の法律が及びますが、XT線(extrality line)を一歩越えるとヴィルシ気質の「無秩序」が広がります。現地での帝国の代表者はヴィルシのヒルヴァティム伯爵ですが、彼の地位は儀礼的なものに過ぎず、日常業務は多数の外世界からの職員に頼っています。ヴィルシには法執行や法的紛争を解決する概念がほとんどないため、帝国はヴィルシャシュでの外世界人の法的諸問題を解決するための組織を、司法省の下で設置しています。帝国はヴィルシを大事な国民と見ており、彼らの感受性を害さないようにあらゆる努力を払っています。
 ヴィルシャシュでの活動は外世界人にとって非常に苦労が多いので、円滑に物事を進ませるためにも、帝国政府はここで商売を行おうとする者に対して、ヴィルシの仲介者を雇うことを強く推奨しています。

ヴェニス Venice 1534 C55A995-8
 この海洋世界で、70億の住民は海上や海山頂上に都市を建設して住んでいます。TL8ではありますが電子機器の製造や海産物の輸出で経済を成り立たせており、この星は貿易業者に人気の寄港地となっています(ただし自前の貿易船団は持っていません)。

エァコィ・コーポレーション Eakoi Corporation
 かつて存在したアスラン系商社です。創業は-835年で、エァコィ星域やエァ星域にあるいくつかの低TL世界との貿易を表向きの(どう考えても儲からない)事業としていましたが、その実態は、出資者であるロァホール氏族のために「将来の領地」を先取りし、他の氏族が定住するのを妨害するための先兵でした。同社による封鎖は完全にとはいきませんでしたが、抑制には成功していました。
 しかしこの利己的な行いによってロァホール氏族は、文化粛清の際に「アスランらしからぬ振る舞い」と非難を受け、小氏族連合からは追撃され、ソロモン(1538)を中心とする人類も貿易戦争を断続的に仕掛けてきました。ロァホール氏族は嵩む戦費によって破綻し、128年にこの地域から撤退しました。
 エァコィ社の崩壊はイホテイ船団のディープ宙域への流入を引き起こし、その結果アスランと人類の対立を増幅させて「動乱(The Turmoils)」と呼ばれる事態に至りました。

王朝危機 Dynastic Crisis of 1024
 カレドン公王国のコリン公王(Prince Colin)が後継者なく死去したことに伴い、1024年に発生した内戦のことです。第二次公王国内戦とも呼ばれます。
 王座を巡ってエドワード・キャンベル卿(Edward, Lord Campbell)とクラヴァース大男爵デイビッド・マクスウェル提督(Admiral David, Earl Maxwell of Claverse)の両派に分かれて戦いが始まり、財界の支援を受けたキャンベル卿が最終的にはダンバートンの戦い(Battle of Dunbarton)で勝利して、1025年004日にエドワード公王として即位しました。一方、敗れたマクスウェル伯は公王国領外のジェルメーヌ(2019)に逃れました。

オークニー(2919)とメイデン(2920) Dienbach Grÿpen
 ナイトリム星域にある両星系は、住民が未だに帝国への併合を拒み続けているので封鎖されていて、隣接するカギシュ(3019)の偵察局基地から監視を受けています。
(※現設定ではただの排外的な人類星系です。ちなみにオークニーのBクラス宇宙港は中継港として、ガス惑星や星系最外周の軌道上にあるのではないでしょうか)

ガージパジェ Gaajpadje 1124 E667874-4
 エァ星団にある独立星系ガージパジェは、低技術ですが自然が豊かで快適な気候の星です。この星には遠く離れた二大大陸や群島があり、港町リジュジャ(Rijudjya)を中心とした西大陸の都市国家群には先住知的種族のジアージェが、東大陸には軍国主義の人類であるクトリング(K'Tring)が住んでいます。両者の緊張は近年高まっていますが、この惑星の大洋が巨大な障壁となっています。
 アスランの勢力圏に近いこともあって、辺境のガージパジェにはこれまで外世界の人類はほとんど訪れていませんでしたが(※ジアージェの伝承の中には第一帝国のヴィラニ人との接触を示唆するものがあります)、カレドン・ベンチャーズ社はジアージェとの貿易交渉に関心があると報じられています。
(※カレドン・ベンチャーズ社による市場調査は1050年頃から行われていますが、実はアスラン企業のハテューウィが1030年頃からジアージェと交易を行っています)

カアニイル Kaaniir 2223 C688611-6 S
 豊かな農業惑星である帝国属領のカアニイルは、テラやヴランドより少し涼しい程度の快適な星です。地表での居住地は赤道周辺の温帯に集中しており、そこには理想的な農地が広がっています。
 この星系は帝国の巨大企業マキドカルンに租借されていて、同社の高級食品部門はこのカアニイルの大規模農園で栽培された様々な作物、極上のワイン、カアニイルコーヒーをはじめ、様々な果物、野菜、食肉などを帝国各地へ独占して輸出しています。
 この星の統治自体は租借前からの政府が引き継いではいますが、法律は企業の厳格な規則が取って代わりました。例えば、現地では殺人は罪ではないですが、殺害された労働者の残る生涯分の生産ノルマを犯人が肩代わりすることで償われます(ただし、ノルマに等しい現金の支払いや、身内を代わりに働かせるなどで免れることは可能です)。また、この星系での生活サービスは全て企業が提供し、その費用が給与から差し引かれます。賃金が高いのは事実ですし、規則も無闇に厳しいわけではないのですが、移民も含めた多くの労働者は自身の境遇に不満を抱いています。とはいえ、この星から出ていけるほどの貯蓄ができる者はほとんどいないので、寄港中の貨物船への密航や乗っ取り行為を試みる個人や集団は定期的に現れます。
 マキドカルンはカアニイルに直接乗り入れる船舶を自社で保有せず、代わりに独立系商船会社と貸切契約を結んでいます。この契約では、船員に現地で会社の規則に従うことが求められ、特に「生産妨害行為」、つまり現地労働者への暴行や殺害、故意か否かに関わらず逃亡を助けることに対しては重罰が課せられます。
 ちなみに帝国は軌道上に偵察局基地を維持し、これはアウトポスト(1926)の海軍基地やカサンドラ(1924)への連絡路として機能しています。

カサンドラ Cassandra 1924 B000538-C
 ここの小惑星帯は鉱物資源の供給源としては平凡で、一獲千金を狙う強欲な余所者が大勢流入するようなことはありませんでした。多くの小惑星帯がすぐに無秩序になってしまうのに対し、カサンドラにはしっかりとした政府があり、居住区では法と秩序が厳しく守られ、その他の空間でも法執行が公正に行われるよう努めています。しかし、昔からこうだったわけではありません。
 この星系は元々、ダカアル(0201) のダカアル・ミネラルズ社によって設立された入植地でした。1086年、耐え難い労働環境と冷酷な経営陣の仕打ちが激しい全面罷業(ゼネラル・ストライキ)を引き起こし、星系全体で生産と出荷が完全に停止されました。しかしこの反乱は意外にも短期間で、ダカアル社の撤退という形で決着しました。ダカアル社は当初から労働者の強制排除を検討していましたが、星系全体に散らばる怒れる鉱夫らを掃討する費用は、カサンドラから得られるささやかな収益には見合わないものだったのです。
 新政府となった「十人評議会(Council of Ten)」は、労働争議の初期指導者陣から形を変えたもので、反乱を起こした植民地を確固たる独立星系に変えるという困難な仕事を成し遂げました。非民主的ではありますが、今も評議会への不満は特に寄せられていません(ただ、宇宙鉱夫というものは上からの支配を本質的には嫌いますが)。
 評議会の下には、宇宙港や居住区画の治安維持、様々な自治法違反の捜査や逮捕状の執行のために、優れた警察組織が置かれています。この警察は20隻程の巡視艇を持ち、救難信号やその他の問題に対処できるようにしています。彼らはダカアル・ミネラルズ社による盗掘を特に警戒していますが、残念ながら防ぎきれていないのが現状です。
 ロックポートはBクラスの宇宙港施設です。ここへは通常の商業交通と鉱物輸送に加えて、アウトポスト(0306) の帝国軍艦艇を自由に入港させています。実のところ、労働者が蜂起中に帝国の表向きの中立と内密の支援を得られたのは、帝国との巧みな裏取引 (宇宙港の開放や優先的鉱物売却契約) の成果だったのです。

カレドン訛り Caledonian Anglic
 カレドン公王国やダンシニー連合の公用語はアングリックですが、古風な単語や発声法がある「カレドン訛り」として知られています。カレドン市民は帝国標準語(コア・アングリック)を容易に理解できるのに対し、多くのアングリック話者は独特なカレドン訛りには苦戦する傾向があります。

クトリング K'Tring
 「クトリング人」とも呼ばれる、ガージパジェ(1124)の東大陸に広く住む好戦的な人類のことです。彼らがどこから来たのかは調査が進んでいませんが、いわゆる《略奪者国家》の一つであるイルサラ帝国に関係があるのではないかと考えられています。
 彼らの技術力は西大陸のジアージェよりは上ですが、大洋を越えて侵略する程には至っていません。

クラヴァース大男爵デイビッド・マクスウェル提督 Admiral David, Earl Maxwell of Claverse
 マクスウェル提督はコリン公王の死後、エドワード・キャンベル卿とカレドンの玉座を争いました。1024年に内戦が始まるとマクスウェル軍は戦闘において優位に立ち、一時は「デイビッド5世」戴冠の目前にまで至りました。
 しかし同年後半のダンバートンの戦いに敗れると、マクスウェル派の最後の砦であるロブ・ロイ(1917)にて敗北が決定的となるまで指揮を執りました。その後は逃亡生活を送り、スカイー(2018)を経てジェルメーヌ(2019)に亡命しました。
 そして彼の子孫は今も、自分こそが公王国の正当な統治者であると主張し続けています。

コベントリー Coventry 1723 X565733-2 R
 コベントリーは、隣接するダンシニー連合が管理する刑務所星系です。約350年前に収容が始まって以来、ここは政治犯や刑法犯といった「好ましからざる者」を人道的に扱う場として効果的に運営されています。
 地軸の傾きによって季節変動が極端であるのを除けば、コベントリーはかなり過ごしやすい惑星です。よってここに収監されること自体が重罰というわけではありません。しかし連合海軍はガス惑星の衛星に監視所と2隻の10000トン駆逐艦を配備し、厳重な監視体制を敷いています。ガス惑星に立ち寄っての燃料補給は許可されていますが、速やかに星系外に出ることが求められます。当然コベントリー自体への着陸は禁止されていて、無許可で接近すると発砲されます。
(※余談ですが、リーヴァーズ・ディープ宙域の3207の星系もコベントリーという名前で、奇しくも暗黒時代の監獄惑星でした。ここでは残酷な人体実験が行われていたこともあり、2500年が経過した今でも「コベントリー送り」という言葉はソロマニ圏各地の刑務官の脅し文句として使われているほどです)

サンドスティンガー Sandstinger
生息地:タシュラカール(1927)
 節足動物のような小型生物であるサンドスティンガーは、6本の脚のうち前脚がシャベル状の鋏に発達していて、これを使って穴を掘り、鞭のような尾の先端にある針から強力な神経毒を放出します。サンドスティンガーは砂漠の端の砂丘地帯にある柔らかい砂の中に穴を掘り、見事に隠れます。そして、隠れ場所付近を歩く自分よりも遥かに大きな生物であっても毒で麻痺させて殺し、群れ全体の餌とします。ただしサンドスティンガーの毒はタシュラカール土着の生物を素早く殺せるよう進化したため、人類には遅効性であることが救いです。

ジェダーハイ Jhederhai
生息地:レジャップール(1218)
 現地を代表する大型の草食動物で、草原や砂漠に様々な適応を見せています。どの先住民文化でも荷役動物として利用されており、遊牧社会では肉や皮まで活用されます。
 外見は羽毛のないダチョウ(テラ原産)によく例えられます。長い脚、緩やかに巻かれた尾、蛇のような首を持ち、その先には黒い単眼の瞳と短い歯のついた嘴があります。大型の個体ともなると400キログラムになり、噛みつきや爪のある脚で蹴りつけて身を守ります。家畜化されて穏やかにはなりましたが、野生のものや、一部の遊牧民が訓練したジェダーハイは非常に危険な戦闘相手となりえます。

ジュラの墜落痕 Crash Jura
 グレンシエル(1912)のジュラ高地(high plateau of Jura)にある墜落痕は、初期ジャンプ技術で造られたサイエの宇宙船の残骸と考えられています。推定で約3700年前からあるこの遺構は、サイエに関心を持つ多くの考古学者や歴史家を惹きつけ、カレドン公王国と帝国の研究者同士が遺構への接触を巡って論争する事態にもなりました。結局宇宙船は、最終的にカレドン(1815)の研究所に移されました。
 宇宙船の中からは、サイエの従属種族(ヰン=ツァイやルーシャナなど)の美術品の他、破損こそしていましたがサイエの軍事基地で用いられたと思われる水晶の鍵(crystal key)が見つかっており、注目を集めています。

セント・ジョージ St.George 2616 A676AA6-C N
 ナイトリム星域の首都であるこの星系は、リーヴァーズ・ディープ宙域のコアワード側の帝国領(カレドン星域・ガルフ星域)を含めた行政の中心地であり、帝国海軍第47艦隊、海兵隊第7571連隊、陸軍ナイトリム方面司令部が駐屯し、様々な帝国系巨大企業が地域本部をここに置くなど、あらゆる意味でこの辺境における帝国統治の中核と言えます。
 現在のナイトリム公爵ネッサ(Duchess Nessa of Nightrim)は1047年生まれで、海軍の戦闘機操縦士でしたが訓練中に負傷して除隊となり、1080年に前公爵である父の死去を受けて公爵位を継承しました。

ソロモン Solomon 1538 B897A97-B N
 この星系に人類が最初に定住したのは、第二帝国時代でした。暗黒時代になるとここを中心とした《略奪者国家》が成立し、-800年頃から星域の覇権を賭けてロァホール氏族と争うようになりました。ソロモンはロァホール氏族が文化粛清によって弱体化した隙を突いて攻勢に出て、128年に氏族を撤退に追い込みました。しかし長きに渡る戦争と領地の膨張はソロモン経済をひどく疲弊させ、200年頃に星間国家は財政破綻で崩壊しました。ソロモンは工業の促進で窮地の打開を目指しましたが、大気は汚染され、人口は数百億人にまで急増してしまいました。
 フトホァーの和約後、ソロモンは帝国に支援を求め、最終的に経済・技術援助と引き換えに帝国海軍を基地に受け入れることに同意しました。これによりソロモン社会は安定し、人口も340億人前後で推移しています。

ダカアル級貨物船 Dakaar-class Freighter
 スターストリーム・エンタープライズ社設計のこの1800トン貨物船は、リーヴァーズ・ディープ宙域における長距離探査貿易でよく見られる商船です。優れた航続距離(ジャンプ-3)と十分な貨物積載量を備えており、ディープの独立星系間での収益性の高い事業展開が可能です。安全性を重視する一部の商人からは武装が足りないとは言われていますが、それでもカレドン商船の定番となっています。カレドン以外でも、例えばイルドリサール(2326)のアアリスキン社は8隻(うち、ドレンスラール号は最近消息を絶ちました)、カーリル(2330)の政府系企業であるカーリル運輸も数隻を購入し、他の独立系商社でも導入実績があります。

ダケン Daken 1830 C631233-9
 ダケンは極めて高温な乾燥した星で、水界はほとんどなく、極地以外で人類は生存できません。もしもテラのサンゴに似た「ゴールドサンド(Goldsand)」がいなければ、この惑星に人が住むことはなかったでしょう。
 この群生体は化学合成の仕組みで養分を得ながら、広大なエルグ砂漠の各地に生息しています。ゴールドサンドは香辛料としてだけでなく、スロードラッグなど医薬品の成分にも加工されます。群生体は砂漠に突然生えてきて、急速に成長した後、猛烈な砂嵐によって散り散りになることで新たな群生体を作ります。よって、ゴールドサンドの採取は嵐で飛ばされる前に素早く行わなければならず、当然危険が伴います。加えてゴールドサンドには、球状の体が猛毒の棘で覆われているサンドローラー(sandroller)という小動物が食料として寄ってくるため、採取は二重に危険な作業となります。
 南極の宇宙港周辺には、925年頃から続く750人ほどの入植地があります。彼らはこの過酷な砂漠の端での生活に慣れ、ゴールドサンドを採取して外世界に売ることで生計を立てています。SuSAGやダカアル社といった企業たちはこれまで、地元民抜きに直接ゴールドサンドを得ようとしてきましたが、惑星環境に慣れていない者には難しいこともあって、全て失敗に終わってきました。
 最近ダカアル社はゴールドサンド輸出の独占契約を強引に結ぼうとしましたが、地元住民は拒否しました。すると入植地で暴行脅迫や破壊活動が相次ぐようになったのです。当然、ダカアル社が裏で糸を引いていると疑われていますが、証拠は見つかっておらず、同社幹部も関与を強く否定しています。

タシュラカール Tashrakaar 1927 D651695-6
 砂漠の惑星タシュラカールは、恒星光が弱い熱帯の極地のみ生命を育む環境が整っています。それ以外は文字通り灼熱の死の砂漠なので、多くの住民は極海(Polar Sea)沿岸の「天に潤されし地(Heaven-Watered Lands)」に居住しています(ただし日中は湿気が多いのが悩みです)。約500万人の彼らは-1800年頃に漂着した地球人の子孫とされていて、数百年前に独立商人が「再発見」した頃には初期工業化段階の技術を持っていました。彼ら住民は礼儀正しく友好的で、現地のタカール語以外にアングリックを解する者も多いです。
 この星の主な経済基盤は、砂を吹き飛ばす大嵐「悪魔の息吹(デビルブロー)」の後、砂漠の地表で発見されるマンガンやコバルトなど様々な高純度鉱物資源の採取です。これらの鉱物は、中央砂漠がかつて海の底であった遥か昔に堆積したものです。現在、これらの鉱物資源は様々な鉱業会社(スターンメタルやデルガドといった巨大企業から、フルトン金属、ダイバースコ、ジェリコープ、ダカアル・ミネラルズといった独立系星域規模企業まで)の関心を集めており、彼らは「鉱石クローラー(orecrawler)」と呼ばれる巨大な履帯式岩石採取車両で採取しています。クローラーがゆっくりと進むにつれて砂漠の表面から貴重な鉱物が採掘され、無価値な屑石(スクリープ)は後方に投棄されます。
 星系政府(部族長らの集まり)は、採掘事業に関心を持つ企業にクローラー操業の許可証を発行し、外世界企業に課税と規制をかけます。特定の土地を鉱石採掘のために利用するには一定(数百万クレジット規模)の賃貸料が発生し、現地の貴重な税収となります。ただし最近では、各種政策が巨大企業寄りだと独立企業が不満を訴えています。
 今、現地が直面している危機はいくつかあり、一番は地元で「砂賊(デューンレイダー)」として知られる粗暴な集団です。かつての入植地からの追放者の末裔である砂賊たちは、広大な砂漠の端の荒野で遊牧生活をしています。砂賊と住民は激しい敵対関係にあり、砂賊に捕まった者は、水をもたらすために砂漠の神々の生贄に捧げられることがよくあります。砂賊の中には平和的な交渉に応じる部族もいますが、大半は情け容赦ありません。
 そして伝統的なタシュラカール文化は、技術の進んだ外世界企業によって衰退傾向にあります。多くの若者が農地や家業を捨てて企業や宇宙港への就職を目指しており、長老たちを嘆かせています。
 余談ですが、ここの帝国企業にとってアウトポスト(1926)の海軍基地の存在はいい「後ろ盾」となっています。これは独立系企業には得られない利点です。

ディアブロ Diablo 2423 B9C7477-9
 この星の地表は500℃以上・60気圧という極めて過酷な環境で、全く居住には適していません。そこではあらゆる防護服は12時間以内に無力化され、車両や宇宙船は損傷しなくても故障が多発します。そんな地表に出るのはよほどのことです。
 それでもディアブロは、工業用デイストーン(daystone)の主要な産地です。これは超高圧下で形成されるダイヤモンドよりも遥かに硬い物質で、多くの産業向け用用途があります。これを求めて、ディアブロには様々な企業が地下採掘複合施設(通称エンクレイヴ)を建設しています。
 エンクレイヴは外気の圧力と高温に対して厳重に対策が取られ、採掘作業はそこから必ず地中を掘ることで進められています。各エンクレイヴには小型艇の発着場があり、(意外にも地中採掘に関心のない)オルタレ社運営のBクラス軌道宇宙港との間で行き来がされます。
 それぞれのエンクレイヴは、デルガド、LSP、スターンメタルといった巨大企業や、星域規模の独立企業が管理する言わば「企業城下町」です。経営陣が労働者を完全に支配しているので、労働環境は過酷になりがちです。そして、各企業に雇われた傭兵が独自の企業法を執行しています(企業によって厳しさに差はありますが、平均治安レベルは7です)。
 なお現在、デルガドとスターンメタルによる小競り合いの余波で、ディアブロも不安定な状態に置かれています。両社は警備強化のために傭兵を追加雇用しており、やがて全面衝突に至るのではと危惧されています。

天的聯盟 Celestial League
 現在の和諧同盟の前身である天的聯盟は、-2000年代に築かれた華人系ソロマニ人入植地を起源に持つウートオ星域とエァコィ星域のいくつかの世界から構成されていました。暗黒時代の間もジャンプ技術を維持し、時折《略奪者》の艦船の供給源ともなりました。
 フトホァーの和約が締結されるまではアスランとの絶え間ない紛争が聯盟を強く結びつけていましたが、その後まもなく内部抗争によって分裂しました。856年に和諧同盟として再結集するまで、かつての加盟世界は何世紀もの間、戦争によって苦しみ続けました。

トーレァ Htalrea 1226 E767610-1 R
 この星系はマールハイム大公国とダンシニー連合の狭間のエァ星団に位置し、固有生物リスタッハから採れる「リッス香(Risthscent)」の産地として主に知られる、自然豊かな未開発世界です。アスランのイェホソー氏族の事実上の属領であり、上空軌道上にはアオシタォハ級巡洋艦が少なくとも1隻は常時配置されていて、許可なく接近すれば警告無しで攻撃されます。こことの貿易は同氏族の商社ハテューウィに完全に独占されていて、帝国などの人類企業には加工した化学物質を法外な値で売りつけています。
 イェホソー氏族によるこれらの封鎖と独占によって、この星系のことはほとんど外部には知られていません。非常に古い記録によれば、二大大陸のうち北大陸の方には二足歩行の原始的な先住知的種族がいたということです。

ドリンサール・ループ Drinsaar Loop
 リーヴァーズ・ディープ宙域の3星域(エァコィ、ドリンサール、ドレシルサー)に跨るドリンサール・ループには、23の星系が含まれています。この星団の銀河回転尾方向(トレイリング)端にあるドリンサール(2032)は、人類がこの近辺を探査する際に玄関口となった星系で、現在ではかつてほどの重要世界ではないものの、その名前は星団の名称に残されています。

ドレールサール Drellesarr 2029 B310550-A A
 この星の起源は、かの《略奪王》ブラックジャック・デュケインの隠遁先だとされています。この過酷で荒涼とした世界には売り物になる資源も何もなく、住民はこの星で生き延び、繁栄するためには己の知恵と責任で文字通り「何でも」しなくてはなりません。
 ドレールサールは、あらゆる意味で自由な港です。ここでは何ら制限も手続きもなく、素性も聞かれずに何でも売買できますし、修理や改造も請け負います。超能力研究所すら公然と営業しています。なぜならここは帝国の国境外であり、超能力を嫌う文化もそれほどないからです(心理的抵抗がないこともないようですが)。基本的にドレールサールの人々は、金になるものなら何でも寛容です。
 ドレールサールには警察どころか法律もないため、公式にアンバーゾーン指定がされています。ここでは誰もが武装しているので、常に礼儀正しく警戒を怠らないことが求められます。また、関税もないためあらゆる物価が下がります(25%引きが目安です)が、一般的には違法とされる商品やサービスはそれほど安くはありません。
 最後に、ここで入手できる物の多くは盗品や偽物であることを忘れないでください。そのような「訳アリ商品」を買ってから元の所有者が現れた場合、購入者がどうなるかはわかりません。

ドレシルサー Drexilthar 1826 B56969D-7 S A
 ドレシルサーは奇妙な惑星です。水界の量はその重力に対してあまりに多く、古代期の大規模な惑星改造が疑われています。海にしか生息していない土着の生命体は原始的で、大部分の生命は既知宙域各地から太古種族によって持ち込まれたものです。
(※この段落は、UWPの規模が2だった頃に理由付けとして作られたものです。規模5に修正された新設定下では不要となりましたが、太古種族による関与があった星系であることには変わりないため、残してあります)
 主要な3大陸は回帰線帯に位置し、全体的に寒冷なこの惑星の中でも一年中快適に過ごせます。しかし赤道地域でも氷山が流れ込んでくるため、遠洋航海は非常に危険です。
 ここを故郷とするイルサラ人が近代化する前の陸地の多くは密生した樹林に覆われ、そこはオーロクス(※家畜牛の祖先)やマストドン(※象の一種)や剣歯虎が支配していました。その後のイルサラ人の文明の進歩は生態系に多少の影響を与えましたが、それ以上に帝国による286年の核攻撃は生態系に深刻な影響を与えました。
 ドレシルサーの住民は極端に軍国主義的で、攻撃的で、政権に従順で、弱者への同情や慈悲の心を持ち合わせていません。この文化は、政府が実施する厳しい軍事訓練によるものです。ドレシルサーの人々こそが銀河で最も優秀な人類であると教えられ、外世界人は弱虫だと軽蔑されます。地元の過大な治安警察と外世界人への差別により、トラベラー協会はこの星系にアンバー・トラベルゾーン指定をしています。しかしこの星の宙域史における存在感もあってか、少なくはない訪問客は監視付きで惑星内を歩き回ることが許されています。
 ドレシルサーは先進技術の入手に非常に関心を持っていますが、技術移転はダンシニー連合、カレドン公王国、帝国、カーリル合州国の間の暗黙の了解によって禁じられています。
 この星系の帝国偵察局基地はガス惑星の衛星に建設され、専門家がドレシルサー社会を詳しく調査しています。また小惑星帯がドレシルサーのすぐ外側の軌道にある関係で、この惑星は流星が落下しやすい環境にあります(年1回の頻度で直径2~3メートル程度の物が落ちてきますし、古代イルサラ文明の一つが隕石激突で滅んでいることも確認されています)。よって偵察局基地は、ドレシルサーに警告を発するための「全天監視」の機能も兼ね備えているのです。

トローヱァエァウィ=フロスーオ戦争 Tralyeaeawi-Hrasua War
 かつてのダーク・ネビュラ宙域で、トローヱァエァウィ氏族は最も強大な氏族とみなされていましたが、その力の源泉は人類との経済的交流でした。発展途上だった頃のアスランは、技術的に進んでいた人類に手を出すことができず、むしろお互いに交易から得るものの方が大きかったのです(※暗黒時代で衰退しつつあった人類の方もアスランの矛先、いや爪先をかわすために下手に出た、という事情もあったようです)。
 しかし-1100年代後半ともなると技術力の差はほぼなくなり、アスランにとって人類の星系は魅力的な獲物に見えてきました。加えて、トローヱァエァウィ氏族が他氏族との競争でその地位が揺らぎ始めていた時期でもありました。
 やがて好戦的なフロスーオ氏族と、その家来フロウオーアォ氏族が暗黒星雲に近いミザー星団(Mizah Cluster)の人類星系を侵略し始めると、-1120年に、利権を失うわけにはいかないトローヱァエァウィ氏族は両氏族に宣戦布告せざるを得なくなりました。これが俗に言う「アスラン国境戦争」の発端とされる出来事です。
 開戦当初はフロスーオ氏族が主導権を握って圧倒しましたが、2年目に入るとトローヱァエァウィ氏族は兵站上の優位性を発揮して消耗戦に持ち込み、両勢力は徐々に疲弊していきました。イェーリャルイオー氏族が停戦の仲介を申し出た時には、両者は喜んで受け入れました。
 この戦争は痛み分けで終わりましたが、もはやトローヱァエァウィ氏族が人類星系を守ることができないことも示しました。アスランによる人類星系への襲撃は直後から増加を続け、その後約1500年間に及ぶ戦乱の時代に移っていったのです。
(※GURPS版などでアスラン国境戦争の開始を-1118年としているのは、この戦争の停戦(もしくはヤロスラフの戦い)を境に時代が変わったという解釈だと思われます)
(※ちなみに、(現在のシークエル(ダーク・ネビュラ宙域 2225)を中心とする)ミザー星団はGDWのボードゲーム『Dark Nebula』の一舞台です。ミザーはイェーリャルイオー氏族とも対等の同盟関係を結べるほど強力な人類星系でしたが、なぜイェーリャルイオー氏族がこの同盟を反故にしたのかは不明です(長年敵対しているトローヱァエァウィ氏族を戦いに巻き込んで消耗させる狙い?))

トロソイェーロテール Tlasayerlahel
本社:クーシュー(ダーク・ネビュラ宙域 1226)
 アスランの最大手企業であるトロソイェーロテール(直訳すると「恒星間商社」)は、元々イェーリャルイオー氏族領内の星系間輸送を担うために設立されました。氏族が成長するにつれて会社も成長し、現在ではアスラン領全ての主要星系間の貨物や旅客の輸送を担っています。
 アスラン企業の類に漏れず、同社もイェーリャルイオー氏族(の男性)が出す指針に従って、氏族から送り込まれた女性経営陣がこの巨大企業を動かしています。

風霊獣 Windstalkers
 グレンシエル(1912)のアネクトール山を訪れる狩人や登山者の間で語られる話として、到達できないような高い岩棚の上から獰猛な「風霊獣」が吠えて、登山者の死を予告するというものがあります。話に出てくる四足獣はグレンシエルの生物形態である六足獣とは異なるため、一般的には虚構と退けられています。
 しかしそれでも、何人かの者は間違いなく何かを見たと確信しています。

フトホァーの和約 Peace of Ftahalr
 帝国暦380年にアスランの(当時の)4大氏族(イェーリャルイオー、トローヱァエァウィ、ハウヘアイール、フロウオーアォ)と帝国との間で交わされた和平条約のことで、これによって数世紀続いたアスラン国境戦争を終わらせ、両者の間に約30パーセクの緩衝地帯が設けられることになりました。
 和平へのきっかけとなったのは、374年にハウヘアイール氏族の巡視船にOEU(古き良き地球同盟)の探査船が撃沈されたとされる事件です(※ただし事実として、当時のOEUは条約違反を繰り返していました)。これにより、アスラン氏族連合(4大氏族と16の小氏族)とOEUが3宙域を巻き込む全面戦争状態となりました。人類のいくつかの小国は帝国に和平介入を要請し、アスラン氏族側も帝国の調停者としての責任を訴えました。377年に皇帝マーティン3世はアスランに謝罪することで事態の沈静化を図りましたが、彼らの名誉を満たすにはこれでは足りませんでした。一方で29選(トラウフー)も戦闘のこれ以上の激化は望んでおらず(※このまま戦争が続けば帝国が氏族を各個撃破して母星クーシューに到達する、という恐れがあったようです)、帝国に使者を送って儀式戦争による解決を提案しました。慎重な検討が行われた後、帝国も受諾しました。
 378年、帝国軍と氏族連合軍の「決闘」がガヴザ(リーヴァーズ・ディープ宙域 1117)とカファル(ダイベイ宙域 1539)を賭けて行われ、何度かの交戦の末に先に帝国軍がガヴザを攻略して勝利しました。続く2年間で和平協定の詰めの交渉が行われ、最終的に380年にフトホァー(ダーク・ネビュラ宙域 1208)にて帝国と4大氏族の間で和約が調印されたのです。確かに全氏族が参加したわけではありませんが、和約に反することは4大氏族への侮辱となるため、報復を避けるためにも和約を尊重しています。一方で、ソロマニ連合は自治区時代から緩衝地帯の星系の併合を繰り返しており、今や連合の国境線はアスラン領に接してしまっています。
(※和約調印の席にて氏族側から謝罪が行われているので、敗者が勝者に謝罪をするのが「決闘」の条件に含まれていたと思われます)

「ブラックジャック」デュケイン "Blackjack" Duquesne
 彼は-1120年から-1100年頃に存在したとされる悪名高い《略奪者》です。多くの民話や伝承が彼と宇宙船スカイラーク・デュケイン号について伝えていますが、彼についての歴史資料は驚くほど少ないのが実情です。

ボタニー・ベイ Botany Bay 1734 E643569-5 A
 この星系は古くからドリンサール・ループの補給地として利用されていて、アスラン国境戦争の時代には帝国軍の仮設補給拠点も置かれていましたが、フトホァーの和約で撤去されて以降は無人になっていました。
 492年、ウー(マジャール宙域 0203)の大企業アフェリオン・エンタープライズ社(Aphelion Enterprises)がまず鉱石採掘拠点を築き、マジャール宙域が第三帝国に併合されると(帝国では非合法となるような)遺伝子操作研究もここで行うようになりました。しかし、アフェリオン社の輸送部門がテュケラ運輸との競争に敗れて収益が悪化すると、ソロマニ・リム戦争がとどめとなって破産に追い込まれました。ボタニー・ベイの管理職や上級研究者はここを去りましたが、一般の労働者はどこにも行くあてはありませんでした。代々働いてきた者にしてみれば、この星はもはや故郷なのです。
 この星が存続していくためには外部からの援助が必要なことは明白であり、住民たちは鉱石の買い手だったグラリンに助けを求めました。当初グラリン政府は帝国やソロマニ連合の不興を恐れて躊躇しましたが、同情した世論の圧力に押され、最終的にボタニー・ベイをグラリンの一員として迎え入れることで合意しました。
 戦後、帝国やソロマニ連合はボタニー・ベイの資産を取り戻そうと法的手段に訴える構えも見せましたが、緩衝地帯の性質上露骨に動くこともできず結局見送られました。破滅の危機を乗り越えたボタニー・ベイはグラリン統治下でむしろ繁栄し、数千人だった人口は30万人にまで膨れ上がりました。
(※グラリン市民が同情したのは、第二帝国に見捨てられた先祖がドロインの温情を受けられたからこそ、今の自分たちがあるからです。なお、この星系がアンバーゾーン指定されている理由は不明です)

マザー・シンブラ Mother Simbula
 「マザー・シンブラ」とは、レジャップール(1218)出身の知識人であり革命家でもある、ハップラーニ人のルラーナ・リハヌール(Lurana Rihanur)の筆名です。SDTC社に雇われた医師の家庭に生まれた彼女は、留学先のジェルメーヌ(2019)で革命思想を身に着けたと思われます。彼女は優秀な学生で、1074年には名門大学の経済学博士号を得ました。
 リハヌールはレジャップールに戻ると教員と労働運動家を掛け持ち、活発に執筆活動を行いました。彼女は治安紊乱や器物損壊の容疑でSDTCの警備部門に幾度となく勾留されましたが、それでも怯まなかった彼女の賛同者は徐々に増えていきました。
 そんな中、SDTCがリハヌールを重罪で捕らえようとしているとの密告があり、支持者は彼女を星系外に脱出させました。その後彼女は1年間公王国内を逃亡しながら執筆を続け、ジェルメーヌに戻って再び教鞭をとり、そして「マザー・シンブラ」の名でレジャップールの窮状を暴露する挑発的な論文『星間商業について(On Interstellar Commerce)』を発表しました。この論文で彼女は、恒星間企業が持つ本質的な搾取構造を力強く説得力ある文章で痛烈に批判し、植民地支配の打倒を訴えました。彼女の論文は星域全体で広く読まれ、議論され、帝国の学会でも注目されました(が、共感は広まらなかったようです)。そして故郷レジャップールでも、革命を求める「シンブラ主義(Simbulan)運動」を巻き起こしました。SDTCはこの論文を強く警戒して現地では禁書としましたが、地下出版の複製本が密かに広まり、労働者の間で熱心に読まれました。
 SDTCはすぐに「マザー・シンブラ」の正体を突き止め、リハヌールを危険なテロ首謀者として監視対象にするようカレドン当局に働きかけました。それでも革命運動が収まらないと、SDTCは彼女を黙らせるために更に手段を選ばなくなり、何年にも及ぶ脅迫と誹謗中傷の末に2度の暗殺も試みました。彼女は1099年以降は隠遁生活を送らざるを得なくなりましたが、しかしこれらの行いはむしろ、人々のシンブラ主義への関心を高めただけでした。

マット草 Matweed
生息地:スカイー(2018)
 スカイーの海上に厚く絡み合って浮かぶ植物です。適切に処理されれば優秀な食品となりますが、残念なことにその花粉は人類の8割に危険なアレルギー反応を起こさせます。

ヤリザメ Lanceshark
生息地:メル(2414)
 その味の良さで広く知られている、小さな雑食性水棲生物です。
 ヤリザメは回遊性生物で、彼らの移動距離はその生涯でメルの半球ほどにもなります。繁殖率は高く、現地の「筏集落」が群れのそばで捕獲を続けていても群れ自体に全く影響を与えないほどです。

ヤロスラフの戦い Attack on Jarslav
 多くの歴史家がこの戦いを、《略奪者》の時代の終わりを象徴する出来事と指摘しています。-1500年代の成立以来、複数の宙域を荒らし回っていた《略奪者》たちでしたが、-1100年代に入るとアスランとの戦いで疲弊し、特にダーク・ネビュラ宙域からは完全に掃討されてしまっていました。
 -1118年、マジャール宙域を進発した大規模な《略奪者》連合と、テラ商業共同体(TMC)やディンギル連盟から成るオピリョク防衛連盟(Opljiok Defense League)がヤロスラフ(ソロマニ・リム宙域 0123)で激突し、《略奪者》側は全軍の3分の2を失う大敗を喫しました。
 この戦いの余波でマジャール宙域の《略奪者》は姿を消し、唯一残されたリーヴァーズ・ディープ宙域の《略奪者》も小規模の軍閥に分裂し、小国を乗っ取るなどして姿を変えていきました。

ラジャンジガル Lajanjigal 1721 DAB6513-8 A
 不気味な黄緑色のもやに包まれたラジャンジガルでは、無防備だと塩素大気によってすぐに死んでしまいます。それでもこの世界には、この大気に適応した全く特異で多様な生態系があります。そんな中で進化した三足歩行の知的種族がラングルジゲーです。彼らは原始的ではありますが、知的で賢いです。
 1080年、ダカアル社の一部門であるダカアル・トレーディングの調査船が、ラジャンジガルには様々な希少金属や放射性物質が豊富にあることを確認しました。しかし従来の採掘技術は特異過ぎる環境のこの星ではほとんど役に立たず、採掘費用が法外な価格になりそうであることがすぐに判明しました。
 そこでダカアル社は、腐食大気の中でも制約なく採掘できるラングルジゲーを利用することにしました。最初は募集でしたが、次第に強引な手段で連行するようになり、ラングルジゲーの側から抗議と抵抗が始まりました。それに応えるようにダカアル社は彼らの小村落2つを爆撃したため、やむなくラングルジゲーは服従しました。
 ラングルジゲーは明らかに搾取されていて、社の設定した高い生産目標を達成できなければ過大な罰が課せられています。様々な星系外の団体がこの奴隷労働に対して抗議を行い、ラングルジゲーにも援助を申し入れましたが、成果はなく、彼らも援助を受け入れません(外世界人を信用できないからです)。
 Dクラス宇宙港相当の小さな軌道施設がダカアル社によって維持されていて、そこにはミサイルを装備した小型船が数隻、異種大気戦の訓練を受けた傭兵小隊、技術者や管理者が詰めています。この星系には鉱石を回収するために定期的に貨物船が寄港しますが、それ以外で外世界との接触はほぼありません。

「乱暴者」アリソン・マードック Alison "Hellion" Murdoch
 フトホァーの和約(380年)以降の有名な海賊です。様々な創作物で知られる彼は、393年にチャニング准将(Commodore Channing)が指揮するカレドン軍によってブラックウィドウ号と共に撃破されました。
 彼が奪い取った財宝の多くは、今も見つかっていません。噂では一部は愛船と共に失われたが、多くは彼だけが知る秘密の隠れ家に残されている、とのことです。そして財宝の存在は、えてして詐欺師たちが撒く餌の材料にもなっています。
(※この隠し財宝の真相はシナリオ『Hellon's Hoard』にありますが、宙域内ならどこでも他の隠し財宝があってもなくてもおかしくありません)

リスタッハ Risth
生息地:トーレァ(1226)
 機敏で獰猛な肉食動物であるリスタッハは、長く粗い剛毛で覆われていて、大型の個体ともなると体重は200キログラムにもなります。森林地帯に生息し、木々に覆われた丘陵や起伏の多い岩場、洞窟などに巣を作ります(そのためリスタッハ猟には徒歩が最適となります)。彼らは木や岩の上から飛び降りて、強力な爪を使って獲物を襲うことを好みます。リスタッハは単独で狩りをしますが、つがいは同じ巣穴を共有します。
 リスタッハの臭腺は様々な匂いを発散させて、求愛や狩猟や追跡など重要な役割を果たしています。この臭腺は高級香水「リッス香(Risthscent)」の原料として、人類やアスランだけでなくジアージェなど様々な種族の間で高い需要があります。なお、リスタッハ1頭から採れる原料は約0.5リットルと言われています。
(※リスタッハはトロール読み、リッスはアングリック読みです。-scentはアングリック由来の単語ですからそれに揃えました)

《略奪者》 Reavers
 一般的な海賊(Pirates)と同様に、独立して非合法の活動を行う船団を指す言葉ですが、海賊は船や航路を襲う能力のみを持つのに対し、《略奪者》たちは星系政府そのものを襲い、乗っ取ることすらできた、主に-1500年から-1100年にかけてダーク・ネビュラ、マジャール、リーヴァーズ・ディープを荒らし回った集団を指します(その特異性を表すために《》付きで表記されます)。
 暗黒時代が訪れると、この辺境の星々ではジャンプ技術を保持できた者がそうでない者から略奪をするようになりました。これが《略奪者》の始まりです。中には生命維持装置を奪われて1100万人が犠牲となったジャネット(1521)のような大惨事に至ったものもあり、その恐怖は現代に至るまで人々の記憶に残されました。ただし、《略奪者》は常に無法の限りを尽くしていたのではなく、時にはイホテイの進出から人類世界を守り、貴重な技術や知識を保つことに貢献したこともありました。
 最盛期には徒党を組んだ《略奪者》たちがソロマニ・リム宙域まで襲撃していましたが、アスランがますます強大になるとダーク・ネビュラ宙域からは掃討され、他宙域の《略奪者》も危険を冒すことを避けるようになりました。そして、-1118年にリム宙域諸国による防衛同盟がヤロスラフ星系での戦いで《略奪者》連合を打ち破ったことで、《略奪者》の時代は事実上終わりを迎えました。リーヴァーズ・ディープ宙域では分裂した《略奪者》が軍閥化し、小国の乗っ取りや後進世界の征服などを通じて長く権力を保ちました。
 -1000年代に「ブラックジャック」デュケイン、「淡紫の」ウー・ルー、イザナク大提督といった伝説的な《略奪者》たちが登場していますが、それが最後の輝きだったかのように《略奪者》は姿を消していきました。やがてフトホァー和約が成立した後の緩衝地帯は、「乱暴者」アリソン・マードックに代表される海賊の時代となったのです。今では《略奪者》という単語は少々美化されて、自由を愛する義賊のようにも捉えられています。
(※こうして《略奪者》が再定義されましたが、世間一般的には「和約の前か後か」で区別されているようです)

略奪者俗語 Reavers Cant
 《略奪者》たちはそれぞれ、自分の仲間内だけで通じて敵味方の識別を容易にする独自の言語を発達させていきました。それは《略奪者》の数だけ存在し、今も一部の地域(マールハイムやカーン)で話されています。
 これらは基本的にアングリックの派生言語ではありますが(※他言語からの派生ももちろんありえます)、現在のアングリック話者が俗語を一度聞いただけで理解するのは困難です。

ルウシャカアン Luushakaan 2021 D541513-5
 薄暗く赤い主星の周りを周回しているルウシャカアンは、冷たく陰鬱とした世界です。平均気温はどこも0度以下で、多くの地域では遥かに下回ります。入植者は各地の活火山の周辺に住んで熱を得ていますが、それはそれで別の危険性があります。
 ルウシャカアンはこの星域にありがちな採掘惑星です。この星は帝国の巨大企業であるスターンメタル・ホライズンの支配下にあり、独占的に採掘事業を営んでいます。
 その厳寒な気候に反して、ルウシャカアンは「熱い」星です。放射性物質など様々な価値ある巨大な鉱脈は、スターンメタルにとって絶好の投資先であり、競合企業からの羨望の的となっています。しかしここ最近、この星は何者かによる襲撃を受けています。数々の証拠はデルガドの仕業であることを強く示唆しており、スターンメタルはカサンドラ(1924)のデルガド施設に対し、小規模の報復攻撃を2度ほど仕掛けました。

レヴィー肉 Leviemeat
 レヴィー肉はスカイー(2018)のレヴィーから加工される、人気のある食品です。レヴィー(「レヴァイアサン」の略)は深海に生きる巨大生物で、体重は最大100トンにもなります。
 狩りは6隻一組の小さな潜水艇によって行われ、仕留めた後に潜水夫によって装着される空気袋によって地表まで引き上げられます。それはとても危険な仕事で、レヴィーの尾の一撃で潜水艇ごと作業員がバラバラにされるだけでなく、仕留めた後でも大型の清掃生物と肉を争うこともあるのです。

レジャップール Rejhappur 1218 B651613-A A
 ハップラーニ人の故郷であるレジャップール(現地語で「家なき者の地」)は、カレドン公王国の属領です。砂漠と草原がどこまでも広がり、逆に言えば大きな水域がほとんどないこの星は、人が住みにくい所です。しかし、価値ある産品と交通の要衝という2つの好条件が相まって、外世界から人がやって来るようになりました。ハップラーニ人は新参者の存在に完全には慣れておらず、この状況は大きな摩擦を引き起こし、容易く全面的な紛争に発展する可能性があります。
 暗黒時代から数度探査が行われたこの星系ですが、この時点では特に価値があるとは思われていませんでした。800年代にカレドン公王国はレジャップールの衛星クラシュラマルにDクラス宇宙港を設置しましたが、これも単なる経由港に過ぎなかったのです。
 そんな中、SDTC社(Scotian Deep Trading Company)は先住民ハップラーニ人が飲料に加工していた原生植物ジャイヘブレクに目をつけました。公王国からレジャップールの開発勅許を得たSDTCは、栽培したジャイヘを輸出するために、補助金を受けて846年にクラシュラマルの宇宙港をCクラスに拡張しました(※公王国としてはリース(1019)、ブライトン(1020)、ダンマーロウ(0921)方面との交通量を増やす目論見もありました)。そしてジャイヘは公王国や帝国で人気を博し、SDTCの富の源泉となりました。
 当初は先住民と協調しながら開発と栽培が行われていましたが、王朝危機後に同社は昔ながらの耕作地を最新式の大規模農園(プランテーション)化するなどして、生産量と収益を飛躍的に増加させました。ハップラーニ人の農耕民の多くは「労働者」に姿を変え、昔よりは生活は豊かになったものの、自分たちの伝統文化が蔑ろにされ、搾取や差別の対象となっていることに不満を募らせていきました。
 そして更に欲深くなったSDTCは、遊牧民の住む草原も農園として収用し始めました。遊牧民らは激しく抵抗しましたが、1059年の「シンブラの戦い(Battle of Simbula)」でSDTCの傭兵部隊が10倍の遊牧民連合を破って鎮圧しました。それでも近年、SDTCの入植地に対して遊牧民が襲撃を繰り返すなど、先住民の間で不穏な動きがあるという報告が増えています。しかし、同社の代表者は不安を抱く投資家やカレドン当局に対し、心配無用との主張を繰り返しています。

ロァホーイ Roakhoi 1224 C969543-5
 ここには人類とアスランが半々に住んでいて、両者の文化の融合が見られる珍しい星であることから社会学者の関心を集めています。別々に入植した彼らは原始的ながらも豊かで興味深い社会構造を形成し、今は外世界の商人からゆっくりと新技術を吸収しています。
 -645年、英雄レァヒャハヤーウ率いるアスランがロァホーイに入植しました。彼らは氏族間戦争で領地を失い、この星に流れ着いたのです。しかし火山噴火・疫病・飢饉など相次ぐ自然災害によって、2世代後には植民船や技術基盤は破壊されていました。
 続いて-480年、アンディロス(1328)を目指していた人類の植民船ボールド・エンデバー号は《略奪者》の攻撃を受け、ロァホーイにミスジャンプして不時着しました。初めは双方敵対的で血も流れましたが、やがて生存のために協力しあい、主にアスランの文化価値観を重んじた統合社会を築きました。
 アスランの貿易企業ハテューウィは1058年に対外貿易を開くまで、何世紀にも渡ってこの星を封鎖して貿易を独占していました。同社は宇宙港も運営しており、1098年にはDクラスからCクラスに拡張を行いました。
 ロァホーイ星系はトラオシエーという樹木の産地として有名です。この種子はトラオスパイス(トラオ)やシーズンゴールドと呼ばれる香辛料、トラオシエーロフロウを生産するために利用されます。
(※トラオの小売価格は1グラムで3クレジットが相場だそうです)

ロジャー・マクスウェル Roger Maxwell
 ジェルメーヌ(2019)に亡命中であるマクスウェル家の現在の当主で、「公王ロジャー1世」を僭称している人物です。彼は現在の公王国内の緊張を利用して、反乱を企てていると言われています。
(※その一方で、中年の彼は酒や薬物の中毒者で、私利私欲で玉座を求めているという噂もあります)

和約遂行艦隊 Ftahalr Enforcement Fleet
 モーブ(3232)を母港とするこの帝国艦隊は、フトホァーの和約を履行するためだけに編成された特殊部隊です。主に巡視艦と軽巡洋艦で編成され、多くの危機的状況や外交事件や実戦経験を積んだ強者揃いが乗り込み、特に、全ての艦船にアスランとの交渉に長けた人材が配属されています。
 艦隊の任務は困難なものばかりで、目につく全てを奪おうとするイホテイから、本来進出すべきではない星に出ようとする人類企業、そして復讐を企図したり単に戦いを求めている集団まで、放置すれば深刻な紛争に発展しかねないものばかりです。艦隊はそれらの危機が起これば多くは援護なしに解決し、すぐに次の危機に向かわなければなりません。
 これまで艦隊は平和維持に見事に取り組み、双方に対して公平かつ名誉ある対応をしてきました。そのかいあって多くのアスラン氏族から尊敬を集め、中には顧問を派遣する氏族もあります。

ワリニル公爵クレイグ・リティニニン Duke Craig Litininin Horvath of Warinir
 1026年生まれの彼は、1059年に父クレイグ・ローガン(Duke Craig Logan Horvath)の死去を受けてエッジ星域公爵(つまりワリニル公)となり、1073年にアムダニ公セナパイ(Duchess Senapai of Amdani)の死去後に宙域公爵に選出されました。若き日の彼は政治に無関心でしたが、宙域公爵就任後は、形骸化していたダイベイとリーヴァーズ・ディープの両宙域の貴族による「高位貴族院(Moot of High Nobles)」を復活させ、貿易や防衛など様々な政策が活発に論議される場となっています。
 彼の唯一の嫡男はクレイグ・アントン伯爵(Count Craig Anton Horvath)ですが、彼もまた父に似て政治に関心を示さず、名門ランヌ家の令嬢と結婚こそしたものの、ダイベイ兵站基地で技術教官の仕事に没頭しています。仮に宙域公爵の継承問題が今発生すれば、その地位はイイネン公かコンダ公に移るのではないかと噂されています。
(※「彼はリティニニン公と呼ばれるのを好む」という設定がありますし、ホルバス家が3代に渡って名前がクレイグであることから、代々クレイグ・ホルバスという名を継承してセカンドネームで呼び合うことが伺えます。つまり、リティニニンにしろアントンにしろ、これが母の名字ではないことが(帝国貴族としては紛らわしいのですが)確定しました)


【参考文献】
・Pilots Guide to the Drexilthar Subsector (Gamelords)
・Double Adventure 6: Night of Conquest (Game Designers' Workshop)
・Travellers' Digest #16 (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Alien Race Vol.4 (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・The Solomani Rim (Mongoose Publishing)
・Deep and the Dark (Mongoose Publishing)


 なお、レフリー限定のライブラリ・データはこちらに分割しました。