私がちょくちょく利用しているトラベラーファンサイトにZhodani Baseというのがあります。昔からUWPデータや様々なツールを提供していて色々便利なのですが、その中にRandom Subsector Generatorがあります。
読んで字のごとくランダムに星域データを吐き出してくれる便利なものなのですが、その設定パラメータの中に「Rules:」というのがあって、選択肢に「Book-3」「Book-6」というのが見えると思います。
下に解説があるので読めば一発でわかりますが、実はトラベラーシリーズの星系作成ルールは、Book 3こと基本ルールの「Worlds and Adventures」と、Book 6の「Scouts(偵察局)」で水界度を決めるルールが異なっています。前者は「水界度=2D-7+大気」で、後者は「水界度=2D-7+規模」とDMの参照先が違うのですが、ややこしいことに後発であるBook 6方式をその後『メガトラベラー(MegaTraveller)』と『Traveller: The New Era』で採用した後、『Marc Miller's Traveller(T4)』と『Traveller 20(T20)』では前者に先祖返りし、現行のMongoose Publishing版ではBook 6方式にまた戻る、と行ったり戻ったりしているのです。
※ちなみに『GURPS Traveller』では『GURPS Space』を利用、『Interstellar Wars』では4D6で決まる惑星の種別ごとにサイコロを振る方式、『Traveller5』では…現物を持ってないのでわかりませんがおそらくT4と同じではないかと思いますなんと「1D-1D+規模」なんだそうです。『Traveller HERO』は…さあ?(笑)
(2019年追記:この記事当時のTraveller5(第5.0版)は確かに規模でしたが、2015年発売の第5.09版(および2019年発売の第5.10版)では大気に戻っています。また、Traveller HEROも大気のようです)
つまり、Book 3方式では「惑星の水の量は大気の濃さ=雨の量」で決まるとしているのに対し、Book 6方式では「惑星の水の量は規模の大きさ=惑星の重力」で決まるとしているわけです。どちらもありえそうなだけに、悩ましいところです(そして大気自体もDMとして規模=重力の影響を受けているだけに余計に)。
さてこの2つの方式でどのように差が出るか、1万個ほど星系を作って水界度の分布を集計してみました(なお面倒だったので大気コードの上限は『メガトラベラー』と同様に15としています)。

ご覧の通り、規模をDMとするBook 6方式では水界1~9で「2D-2」で決定される規模と同じような発生分布となるのに対し、大気をDMとするBook 3方式ではDMに加算される「大気が0、1、A+ならDM-4」がそのままかかってくる分だけ「歪み」が生じているのがわかると思います。大気が薄い惑星が水界0になりやすく、異種大気星系の水界度が高くなりがちになるわけです。
またBook 3方式で一番影響がでるのは、貿易分類で「氷冠」になる星系が減ることではないかと思います。データの抽出がうまくいかなかったので(汗)具体的な個数を出すことはできませんでしたが、単純に考えても氷冠世界の条件である大気0と1で水界にDM-4がかかるということは、水界度決定の時に2Dで11なり12を出さないと氷冠世界にはなれないわけですから、規模の大きさで救われる可能性がない分だけ氷冠世界は減りそうですね。
で、どっちが正しいのかというと…おそらくマーク・ミラーの意図としてはT4でも採用しているBook 3方式だったのでしょう(T5ではDMが規模になりましたが)。Book 6でDMが規模に変わったのがそもそも誤植、という話もありますが(そういえばホビージャパンの日本語版でもルールブックとチャートブックで異なっていましたね(笑))、『メガトラベラー』では誤植とされていないので謎は深まるばかりです。
まあグラフでは大きな差に見えますが、確率に直せば1~2%程度の差、つまり1宙域規模で星系を作ってようやく数個違ってくるぐらいですので、1星域しか作らないのであればそこまで気にしなくてもいいかもしれませんが、一応「Book 3方式は水界0とAが多めになりやすい、氷冠が少なくなりやすい」ということは頭に入れておくといいかもしれません。例えば、ソロマニ・リム宙域のガシッダ星系はUWPが「A36A969-E」(帝国暦1100年代)ですから、Book 3方式でないと規模3で水界Aにはなれません。そういった「極端な」世界を許容するか、「規模3の重力では水界8が限界だよな」と思うかは好みの問題でしょう。
※上の例を見るとソロマニ・リム宙域はBook 3方式で作られていそうですが、その割には氷冠世界もそこそこあるんですよねぇ(汗)。確率的に異常かどうかまでは確認していませんが、そもそもサイコロを振らずに意図的に作っている可能性もありそうです。
(2019年追記:後にガシッダ星系のUWPはT5SSによって「A56A969-E」に修正されました)
結局何の解決にもなっていませんが(汗)、何かしらの参考になれば。(追記:T5も規模派に転じたようなので、とりあえずDMを規模にしておけばいいような感じですね